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マンションストックの現状と再生の課題

国土交通省 住本靖住宅企画官
21世紀のマンション管理運営を考えるフォーム」での講演

1.大規模修繕・改修工事についての相談

マンション管理について純粋に法律的な問題にとどまるのならあれば弁護士に相談にいけば必要なアドバイスは受けられます。けれども大規模修繕をしたい、さらに機能向上のための改修工事をしたいというときに、管理組合員や役員はどこに相談に行ったらよいのかわからないというのが実情ではないでしょうか。
さらに具体的に工事の発注をしたいときにどの事業者に依頼すればよいのか、あるいは事業者の提案した工事内容や金額が妥当なのか、工事をしっかりしてもらえるのか、さらに工事後に瑕疵が発生した場合に保証は大丈夫なのかなど、管理組合としてマンションの共有部分の工事の場合は、費用負担の適切さを各住戸所有者に説明する必要がありますし、万一工事後に瑕疵があった場合には役員だけの問題に止まりません。その意味で各戸での通常のるフォームよりもある意味では悩みは切実といえます。

2.気軽な相談窓口からスタート

現状では中立性を保って具体的な計画修繕にのってくれるか、もしくは業者選定に協力してくれる機関はほとんど見当たりません。マンション管理、とくに計画修繕・改修等については業者を含めてデータ・情報がよくわからない、のが実情で適正な維持管理のうえで大きな問題となっています。
たしかにゼネコンや専門業者とういう工事のプロは存在します。設計事務所もあります。けれども管理組合の役員は専門家ではなく普通の居住者であり消費者です。たとえば複数の業者の大規模修繕に対する内容、価格が比較対象できるような施設、また組合員の方が何か問題が起こった時に(気楽に相談に乗れますよ)といった駆け込み寺のような存在がとても重要です。
つぎの段階になると施工業者の選定です。財団法人「マンション管理センター」はさまざまな管理問題の相談を行っていますが、中立性の観点から業者紹介はできません。室内の内装リフォームについてはいろいろなサイトがありますが、マンションの修繕・改修についてはそういった業者紹介サイトはほとんどない状態です。

3.再生のためのリフォーム

住宅局ではマンションの老朽化問題解決のために、修繕や改修の技術開発・整理のための検討会を開始しています。他方で空き家問題も見逃せません。これがスラム化の引き金になります。たとえば空いた一戸が出たとしても魅力あるリフォームに仕上げ売れるようにします。そこでこうしたリフォームの技術とともに売買のノウハウも問われてきます。売買とリフォームが一体となった時に魅力あるビジネスになります。
こうしたことを建物全体の問題として捉えることにより、マンション全体をグレードアップするのがマンション再生のへの道でもあります。

○建替え

さて建替えですが、建替えの条件として還元率が一定割合以上ないと合意形成が事実上不可能といわれています。合意形成が可能なのはおおよそ7割から8割以上の還元率、というのが一般的です。既存不適格を含めて容積率や日影規制等を勘案し、仮に容積率などに余裕があっても建替え後に外部の第三者に分譲するマンションが売れなければ採算性が合わなくなります。となるとこうした条件をみたすところは限られてきます。
老朽化問題を正面から捉えると維持管理・改修がありその延長線上に建替えがあってはじめてマンションの将来展望が見えてきます。

○除去・放置

マンションの場合、現行法上は全員合意がないとできません。しかしこのままの法制度だと放置されたマンションが多数出現する可能性があります。その前に、全員合意がなくても売却・処分する手法を検討することで、マンション自体の再利用や他用途への再開発が容易になる途も開いておくことも必要と考えます。今後、マンションを除去して更地に戻す必要性も高まると思います。

○管理会社に求められる提案力

こうした様々なマンション問題において管理会社はどうような役割を果たすべきかあるいわ果たせるかについて最後に述べさせていただきます。それは、あくまで委託された管理行為に留まるか、あるいは修繕・改修・建替えにまで関与していくのかという論点になります。もちろん、ここでいう管理会社の関与という意味は、管理会社が自らが行うという意味ではなく、管理会社に出資している企業グループがトータルでこなすという意味です。
関係企業をすべて資本傘下においてトータルでこなせる企業は限られているので、提携という形でのグループ化の方が多くなるかもしれません。こうした業務をトータルでセットにして取り組むことによりはじめて管理組合のニーズに応えられることになります。
管理会社自らが受託管理しているマンションについてだ規模修繕工事を自ら受注することは弁護士会などから利益相反と指摘される傾向があります。けれども三井グループ、三菱グループなど同じグループ企業であっても独立した企業として条件の良い内容を提案した企業と提携することは日常茶飯事です。
ただし、管理会社はマンション管理組合や居住者の利益を第一として、良き相談相手としての地位を確立することが、その後のビジネスチャンスの基礎となり出発点となるとご認識いただいたけばと思います。

そのうえでどこにビジネスチャンスがあるかを見極め、どのようなスタイルや方法で展開するかを決断し、具体化・商品化できることが大切です。

(マンションタイムズ2012年4月号より)