老朽マンション「築30年」建て替え促進
                                             2007年9月

阻害要因調査へ…政府方針

 築30年以上を中心とする老朽マンションについて、政府は基本的に建て替えを推進していく方針を固めた。

 大地震などの被害を最小限に食い止めるのが狙い。今秋から、建て替えの障害となっている要因などについて、初の本格的な実態調査に乗り出す。調査結果は、建て替えにかかわる区分所有法の見直しの検討や、今後の建て替え支援施策に反映させたい考えだ。

 築30年以上のマンションは現在、全国に約1万棟、約56万戸あると推計されている。老朽化が進んでいるものも多く、阪神大震災級の地震に襲われた場合などは、倒壊の危険性などが指摘されている。

 しかし、区分所有法に基づき、建て替えには、区分所有者らの8割(5分の4)以上の賛成による「建て替え決議」が必要だ。費用負担や転居手続きなどをめぐり、住民の合意形成が難航するケースも少なくない。

 国土交通省によると、阪神大震災の被災マンションの建て替え(計105件)を除けば、今年3月末現在で、建て替え工事が実施されたのはわずか106棟。実施中か準備中は32棟にとどまっている。

 このため、政府は今秋から、建て替え決議の要件見直しへの賛否や、建て替え支援策への住民要望などについて、実態把握のアンケートやヒアリング調査を行うことにした。

 調査は、法務省と国土交通省が共同で行い、2年間の予定。

 調査対象は、連絡先が把握できる管理組合や管理会社で、まず、アンケートを送付。<1>建て替えニーズの有無<2>ニーズはあるのに建て替え手続きが進まない場合の問題点―などについて回答を求める。今年度中に集計・分析を行い、結果をもとに、居住用、商業用などのタイプ別に08年度にヒアリング調査を行う。

 建て替え決議には、<1>再建建物の設計概要<2>取り壊しや再建費用の概算額<3>費用分担の方法<4>再建建物の区分所有権の配分―を明確にし、区分所有者らの8割以上の賛成が必要だ。

 反対者の権利を十分に保護する必要があるとの見方がある一方で、建て替え推進派住民や開発業者からは、この要件が厳しすぎるとの指摘が出ている。

 マンションの建て替え支援派を巡っては、阪神大震災での被災マンション建て替え問題を契機に検討された「マンション建て替え円滑化法」が02年に制定されるなど、反対者の所有権買い取り手続きや、公共住宅への優先入居などの施策が整備されている。

[解説]震災時の安全確保

 老朽マンション建て替え問題は今後、震災時の住民の安全確保や防災上の観点からも、政府が取り組むべき大きな課題である。

 耐震基準は、1981年に大地震発生に対応するため、抜本的に見直された。95年の阪神大震災では、当時の基準で建てられたマンションに大きな被害だ出た。政府は、都市防災の観点からも、耐震性強化のための建て替え促進策の整備・拡大が必要だとみている。現在でも、建て替え工事には、共用部分整備の公的補助制度などがある。国土交通省は、調査をもとに、さらなる支援策の充実に取り組みたい考えだ。

 一方、法務省は区分所有法を見直し、建て替え要件を緩和することには慎重だ。同法は、マンション建設が盛んになった62年に成立した。当初、建て替えは全会一致が基本だったが、非現実的だとの理由から、83年の改正で5分の4以上の賛成による多数決での建て替え決議制度が創設された。民法には、複数の人が共有する物の変更には「全会一致」の合意が必要だとの原則がある。さらなる、要件緩和には、この原則とどう折り合いをつけるかが課題となる。(政治部 久保庭総一郎)
                               (2007年8月31日 読売新聞より)

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